土蔵の悪夢
乱歩邸土蔵内で乱歩の人形を撮影した事がある。乱歩はあまりの寒さに書斎としての
使用を断念したそうだが、実際、足元から寒さが沁みてきて翌日風邪をひいてしまった。
乱歩の長男、平井隆太郎先生とは何度かお会いしていたので、人形の乱歩と並んで
親子共演も撮影させていただいた。実はその際ピストルをかまえていただき、二探偵図
としたかったのだが最後まで言い出せず、前日入手していたリボルバーはポケットの中
であった。
私の乱歩体験は御多分にもれず小学生時代の少年探偵団シリーズから始ったわけだが、
土蔵の内部は探偵団ゴッコをするには最適であろうし、イタズラをして罰に閉じ込められ
るには効果絶大であろう。蔵書に圧倒されながらも土蔵内ではそんな事を空想していた。
そのせいか後日、立教大学の学長室で関係者に詰め寄られ小突かれている夢を見た。
土蔵内の貴重な文献すべてが、私が子供の頃にした悪戯描きだらけだったという悪夢で
あった。
文藝別冊 江戸川乱歩 河出書房新社