ジャズ・ブルース シリーズ
ロバート・ジョンソンぐらいの天才になると様々な伝説が語り継がれている。
ヘタだった演奏が、ある時を境に素晴らしく一変し、「それは悪魔に魂を売り渡したから
に違いない」などと。
私がロバート・ジョンソンを造ろうと思った時、まず始めにイメージしたのは青空をバック
に十字路に立ち、契約の為に悪魔を待つ若者である。その顔は何事か企んだ面持ちで
なければならない。
96年の個展において、始めて写真を発表した。今まで仕事その他で、私の造った人形
を何人ものカメラマンに撮っていただいたが、そのつど思ってもみないように撮られるの
が面白く、いつもおまかせしていた。しかし私はこういうつもりでこの人物を造り、このよう
に見えるのだということを、自ら撮影することで、 表現できるのではないかと以前から考
えていた。ただ使用するカメラのフォーマット、レンズの選択、ライティングの方法などな
かなか決まらず、撮影にいたらないまま十年ほど経ってしまっていた。
ところが、個展もあと二ヶ月と迫った頃、タナからボタモチのように様々なことが解決して
いったのである。一つには背景の壁や床や地面などを全部造ってしまったことが、大きい。
よって画面には私の造ったものしか登場しないこととなり、積年の思いを形にする作業に
没頭していった。
それまで架空の人物が中心であったのだが、その時の個展では実在した人物を主に造
った。中にはブラインド・レモン・ジェファーソンのように、斜めをむいたボヤケタ写真が一
枚しか残っていない人物もいたが、誤解を恐れずに言えば本当はどうだったかということ
は、実はあまり問題ではない。自分の中にどんなイメージとして存在しているかだけが肝
腎なのである。
また撮影において、相手がジッと動かない人物であるにもかかわらず、度々シャッターチ
ャンスを逃がすということがあった。どうやら決定的瞬間というものも、被写体の側にある
のではなく、自分の中にあるようだ。
「97年玄光社イラストレーションより」